2021~2022年頃から、Web系ライターである自身の周囲では静かな変化が起きていました。

「実はクライアントワークを減らしてYouTube運営にシフトしました」
「うちはチャンネルを複数運営して月●●万円の売上になっています」

大変失礼ではありますが、同業者の報告を聞いて「あの人がYouTuber? 意外すぎる」という感想を抱きました。

というのも、それらの報告をくださったライターの皆さんは、これまで裏方として丁寧な文章を書いて活躍してこられた印象だったのです。

「YouTuberって美男美女が面白おかしい企画をやったり、ある分野の先駆者が鋭い考察を述べたりする仕事だった気が……」

どうも腑に落ちず、しばらく調べてみることに。すると発見がありました。

どうやら「YouTubeは運営者が顔出し・声出しで主役を務めるもの」という認識はずいぶん遅れているらしい…

私が初めてYouTubeを始めたときはビジネス系発信者が目立っていた時期で、たとえばマコなり社長やマナブさんが表に出ていた印象なのですが、全く別世界になっていたようです。そして現状を見て思いました。

あれ、これなら自分にもできるんじゃない?

2022年の夏から今日まで、半年と少しばかりYouTubeに参戦してみたので、その体験談をここに残しておきます。

現状の成果としては、初収益化したチャンネルの登録者数が2万名となり、大人2人がつつましい生活を送れる程度には広告収益をいただいています。

この記事の執筆者

藤原 将

2018年からフリーランスライターとして主に法人メディアの記事制作に従事。

ランサーズ株式会社より「ランサーオブザイヤー2021」を受賞。大和出版『文章起業』など文章を題材にした著書複数。2022年からYouTube運営に注力。

どんなYouTubeチャンネルを始めてみたのか

著書やSNSから私を知ってくださった方はご存じかもしれませんが、私は吃音症という言語疾患があるため基本的にトークが苦手です。ですが、YouTubeはそんな私をも受け入れてくれました。

  • 自分が台本と映像を作成するチャンネル
  • 自分が登場人物として映るチャンネル
  • 自分が企画だけ担当するチャンネル

これら複数タイプのチャンネルを運営していますが、いずれも自分が台詞を発することはありません。ナレーターの方が話してくださったり、合成音声に台本を読み上げてもらったり、そういった形態でも自然に視聴してもらえるコンセプトで運営しているからです。

私が運営しているチャンネルとは全く関係ありませんが、たとえば以下のようなYouTube動画は運営者本人の顔出し・声出しが不要です。※ただし構成力や技術力は凄まじいです

ですから、あえて頑張って苦手なトークを頑張る必要もない……と思い、流行り廃りが少なそうなジャンルを選んで動画を投稿しています。

  • トークが不要
  • 権利問題に抵触する可能性が限りなくゼロ
  • 定期的に新しい視聴者が生まれそう(ある年齢・立場になると見たくなる等)

上記をクリアできて、少なくとも1動画あたり5万再生以上をイメージできるコンセプトであれば、どれだけ稼げそうかは関係なくスタートしてみる方針で行動しています。

なお、オープンな場所で具体的なチャンネル名は公開しませんが、それは以下をはじめいくつかの理由によるものです。

YouTubeを始めてライター活動に活きた気付き

そもそも「YouTube運営経験はライター活動にどう活きるか」を書きたいと思い、この記事を書きました。結論から言うと、以下の点でライターとしてのレベルアップを感じています。

  • 視聴者がコンテンツにどう反応するのか感度が高まった
  • 音・リズム・ビジュアル情報への感度が高まった
  • マス層・コア層とは何なのか理解が深まった

「直接こう役に立った」と書いていないため、イメージしづらいかもしれません。ただ、上記全てを言語化して丁寧にお話すると退屈な報告に終始しそう…と感じたため、簡単にまとめることにしました。

  • 狙った人に振り向いてもらえそうな言葉を理解し、使える
  • 読み上げたとき心地よく聞こえる言葉を理解し、使える
  • 見栄えのいい画面の素材となる言葉を理解し、使える

「…で、これらがどう役に立つの?」と思われたかもしれませんが、今後長くライターとして生き残るなら、あらゆる特性のメディアで “多種なコンテンツの設計図となる文章” を書く力が必須だと考えています。

単体で機能する “文章として消費するための文章 だけではなく、“音声や映像に変換した際の体験価値を考慮した文章 を書く力……とも言い換えられそうです。

あっさりまとめるなら、センスのいいWeb特化のライターを目指すときYouTube運営は大変いい刺激になると感じました。

2023年からYouTube運営を始めるなら

Webライターとしてのセンスを磨くためにYouTube運営を始めるなら、以下のルートはおすすめしません。

  1. Webライターの情報発信をYouTubeで始める
  2. 投稿した動画にSNSやブログから視聴者を流す

上記の流れは私も一度実践しましたし、これまで多くのライターが挑戦してきました。これはこれで、手持ちの知的資産を使えるため手軽にYouTube運営を始められるのですが、センスに磨きをかける目的には不向きです。

そう判断できる理由は複数あります。単純なところだと、数字を伸ばすのが難しくデータを集めにくいという点が挙げられます。

センスを磨く方法の1つに「自身のアウトプットに対して集まったデータを確認し、反省と改善を繰り返す」があると思いますが、これを加速させるなら1のアウトプットに対して1のデータが集まるより、1のアウトプットに対して1万のデータを集められる方が好都合です。

以上を考慮すると、トップ層の発信者でも10万再生を超えることが珍しいWebライター特化のチャンネルは、より多くのデータを集める観点では不向きだと判断できます。
※スクールや教材を販売する目的ならアリだと思います。

ですので、自分にできることにとらわれず、一度頭を空っぽにしてからチャンネル構想に踏み切ることを提案します。

  • 自分が好きなチャンネルの上位互換を目指そう
  • 今後勉強したい分野と関連するコンセプトにしよう
  • 最近YouTubeでよく見るあの分野・形式で作ってみよう

私の場合、これらの広ーい切り口から少しずつイメージを固めて、自身が飽きずに続けられそうなコンセプトを打ち出してスタートします。「自分はライターだからこの方向で」とは考えません。

チャンネル立ち上げ後の動き

最初から外部委託に頼り、勢いよく動画を生産していく方法も効率的とは思いますが、一度でも動画を自ら1から10まで作ると勉強になります。

私も最初のチャンネルは全工程を自分で進めましたし、今でも外注ゼロのチャンネルを2つ運営しています。こうすると、外部パートナーに依頼する際の指示出しや予算管理の精度があがりますから、いざ外部の方に協力を仰ぐフェーズになってもあたふたしません。

YouTube運営全般の勉強については、検索エンジンやSNSをあたると無料公開された情報がたくさん見つかります。ただし私の場合、YouTube運営の自習に不向きな性格だと早々に気付き、いくらか教材にお金を使っています。サロンやコンサルも利用しました。

おおむね、YouTube関連の学費はライターの勉強より高くつく傾向なので、投資先の参考になればと思い各領域の「個人的に購入して良かったコンテンツ」を載せておきます。

YouTube運営の全体図を学べるコンテンツ

「とにかく体系的、網羅的にYouTube運営を学びたい」と向上心に溢れている方には、生パさんの著書をおすすめしています。豊富な画像やグラフを交えて、YouTube運営の基礎知識がまるっと400ページ超で解説されています。

YouTube運営の開始時期よりあとに出版された書籍であるため、私自身は後述のnoteを教科書として活用しましたが、いまからYouTube運営を始める方は本書で基礎を学ぶのが王道かもしれません。

コンセプト設計を学べるコンテンツ

妻子持ちサラリーマンYouTuber(現在は独立されました)ヤコさんの「赤note」と通称されるこちらのnoteは、大変読みやすく基礎を学ぶのにピッタリでした。前述した書籍を含め、どちらも「基礎を学べる」と述べましたが、抱いた印象はやや異なります。

  • 企画・撮影・編集まで広く学ぶ → 生パスタさんの書籍
  • チャンネル設計と舵取りを学ぶ → ヤコさんのnote

知識がない真っ白な状態であれば、どちらを手に取ってもきっと役立ちますし、少なくとも私は両方を手にとって片方が無駄だったとは感じていません。

ただし書籍と比較するとどうしても高価に感じられるため、出費が痛い方はまず書籍を購入し、書かれた内容を愚直に実践するのが良いと思います。

noteリンク

2022年6月(初収益化の約2ヶ月前)に購入

個人的には、これら2つのどちらかさえ入手すれば、収益化に必要な知識は十分に身につくと感じます。あとは、YouTubeのヘビーユーザーになってどんなチャンネルが人気なのか体感し、それを自分の行動計画の糧にする意識が大切だと思います。


※以下は「収益化後」に重宝したもの

企画への “光の当て方” を学べるコンテンツ

YouTube運営を始めると、自分の動画と伸びている他チャンネルの動画を比べて「似た企画なのになぜあちらばかり伸びるんだ……」と無力感に苛まれます。その原因を自ら突き止められる人もいるのですが、解明には根気強さが必要です。

本項で挙げるコンテンツには「企画に対してどう光を当てたら魅力を最大化できるのか」のパターンを分類し、すぐ実践できるレベルに落とし込んだものが列挙されています。制作者は先ほどのnoteと同じく、ヤコさんです。

即断が難しい価格設定なので、私が友人に勧めるときは「YouTubeの広告収入がこの値段を上回ったときに検討するといいよ」と言っていますし、自身もそうしました。ただ、購入しないにしても課金前のエリアにある講義動画は大変勉強になるので、視聴をおすすめします。

応用力が働く方であれば、講義動画を見るだけでもアウトプットのレベルが上がると感じました。

Brain (アフィリンク)
Brain (非アフィリンク)

2022年10月(初収益化から約2か月後)に購入

YouTubeアナリティクスを学べるコンテンツ

最近はライターと並行してブログを運営する方も多いので「アナリティクス」という言葉が通じると思いこちらも紹介。

ブログ運営中にGoogleサーチコンソールやGoogleアナリティクスを見るように、YouTube運営者はYouTubeアナリティクス(YouTube Studioの機能)を見ることになります。

個人的に、ブログの収集データは「こんな数値だから次はこう改善しよう」と方針を打ち立てやすいのですが、YouTubeに関してはちんぷんかんぷんでした。

そこで、YouTubeアナリティクスについて発信するGOさんのTwitterを過去投稿から全て拝読してみたのですが、自身の理解力が足らず断片的に知識を拾うだけで精いっぱい。

そこへ投下されたのが、YouTubeアナリティクスに焦点を当てた本項のnoteでした。TwitterのYouTube界隈に接触していると、多くの方がこのコンテンツを待望していたのがひしひしと感じられます。

こちらも値段だけ見るとお高めですし、分析手法を扱う特性上、理解と実践のハードルは他よりやや高いと思いますが、生のデータ・実践結果・独自考察……といったワードに惹かれる性格の持ち主には輝いて見えるコンテンツだと思います。

noteリンク

2023年3月(初収益化から約7か月後)に購入

番外編 カメラ撮影と音声収録からしっかり学びたい場合

YouTubeに直接言及したコンテンツではありませんが、もしもYouTube運営を始めるにあたり「一眼レフ」や「本格派のマイク」を使った収録に挑戦しようと考えているなら、ぜひこちらの一冊をおすすめしたく思います。

書籍としては高価な部類に入りますが、カメラを触るのが初めてなら「構図の魅せ方」や「画面の色づくり」や「照明の当て方」など勉強になることばかりです。

以下は私が趣味で撮った写真ですが、こんなレベルより100倍すごい画をバシバシ撮って、作品づくりに活かせる知識が身につく一冊でした。しかも音声収録まで学べるなんて……

実写系、かつ画面内の情報を繊細にコントロールすべきコンセプトのYouTubeチャンネルを始めるなら、参考になる部分が多々あると思います。ただし「超初心者向けの解説」というわけでもないので、一度本屋さんで試し読みしてみることをおすすめします。

私自身、まだまだライターとしてもYouTube運営者としても未熟ですが、本記事を含め共有した情報が誰かの役に立てば幸いです。

今回紹介したもの以外にも多数コンテンツを買っていますが、まだ知らない教材もあるはずなので、ぜひおすすめがあればコメント等でお教えくださいませ。