貧乏フリーランスに取材をした記事を読みました。
取材を受けていたフリーランスの男性は、過去に僕が見たことのあるフリーランスの生き写しみたいです。
すでに夢に破れていることも気付かないまま、永遠に着かない夢の島へ船を進める彼の言葉が、とても虚しく感じられました。
今回は、夢を見て脱サラしたフリーランスが、どうして貧乏になるのかご説明します。
フリーランスは「価値の売り方」であり生き方ではない
フリーランスに自由な生き方を見出して、本当に豊かな毎日を送っているフリーランスはどれほどいるのでしょう。
思うに、フリーランスは「自分の人生を自由にする道」ではなく、「価値提供のあり方を自由にする道」です。
もっと分かりやすく説明するため、僕自身の労働者~個人事業主の経緯で例えます。
僕は「会社員」という枠組みでは価値提供できなかった
僕は、もともと月収10万円の貧乏な美容師です。吃音症という言語疾患により、みんなのように上手く電話対応や接客ができませんでした。
人並みに価値提供ができず、労働者として失格の烙印を押されて過ごしてきたのです。それを救ってくれたのは、フリーランスという生き方でした。
僕は、吃音症が価値提供の邪魔をしない「フリーランスライター」として生まれ変わり、新しい価値提供のあり方を覚えたのです。
価値提供の最適化を図るからこそ、人生の自由度は高まる
自由な人生とは、要するに「お金と時間に余裕のある生活」の連続です。
ただ、美容師だった僕のように、人並みに価値提供ができない枠組みのなかにいる限り、価値提供の対価である “お金” は手に入りません。
そして、時間を買えるアイテムはお金のみ。
つまり、自由な人生とは「価値提供の最適化による収入増加」ののちに見えるものであり、価値提供を人並みにできないなら不自由(貧乏)な人生から脱することはできないのです。
貧乏になるフリーランスの共通点
貧乏になるフリーランスの共通点として挙げられるのは、一般的に以下のようなものです。
- 高単価な案件を受けるスキルがない
- 高単価な案件を勝ち取る営業力がない
- 売上を浪費に充てて、税負担で苦しむ
言わずもがな、上記のポイントも貧乏になる要因ではあります。
しかし、ここでは一歩踏み込んで、より根本的な精神状態の問題についてご説明します。
「価値提供」が商売の本質だと理解していない
貧乏になるフリーランスが、どうして貧乏になるのか。その理由は、2つ挙げられます。
- 投じる時間・労働力に対して、1件あたりの報酬が少ない
- 仕事の依頼数が少なく、継続発注にも繋がらない
前者は、発注者に「フリーランスとして働く、あなたの時間・労力は安い」と思われているため起こります。
後者は、フリーランス側の発注者に対するアプローチが少ない、あるいは「あなた程度のフリーランスには依頼したくない」と思われるために起こるものです。
これらの問題は、自分の持つ “提供できる価値” を認識し、その価値を高める努力や工夫をしなければ解決しません。
しかし、貧乏になるフリーランスというのは、貧乏の理由を「僕らを買い叩く市場のせいだ」と言います。
……が、これは違うと思います。
市場が金を出し渋るのは、スキルを磨かないフリーランスが増えたからです。提供される価値水準の低下にともなって、市場が金を出し渋っているとも言い換えられます。
「どうやって、提供できる価値を増幅させられるのか」を最優先に考える。
「受け売り」が行動の根拠になっている
「〇〇さんのようになりたい」と思い、勇気をもって行動することは良いと思います。しかし、人の言葉をアクションのきっかけにすることと、人の言葉を行動指針の中枢においてしまうのとでは訳が違います。
冒頭部分に挙げた取材記事は、以下のコンテンツです。
外部サイト:東洋経済オンライン「フリーランスを志す31歳男性の「夢と現実」」
インタビュイーの不安定な労働スタイルを見て「ずばり、あなたは名ばかり事業者になっていませんか」と問いかける取材者。
その鋭い指摘に対して、彼は「マッカーサーの “前へならえ” の価値観は古い」とか「アフィリエイトで稼げたら有給休暇のように過ごせる」とか、どうにも的を射ない言葉で反論します。
彼は起業サークルに加入し、20万円ほどの入会金、1回800円の参加料を支払いつつ、セミナーにて先ほどのマインドセットを学んでいるそう。
彼も、受け売りが行動の根拠になっている典型例だといえます。
人の言葉はきっかけ、その後の意思決定を人の判断に委ねてはならない。
「〇〇さんはこう言ってた」ではなく「僕はこう考え、こう思うから」と言えるまで自分と対話すること。
「どうやって実現させるか」を考えていない
駆け出しフリーランスのあいだは、「自分が何をしたいのか」ばかり考えても良い結果がでないように思います。
むしろ「自分は何が提供できるのか」と「市場は何を求めているのか」をすり合わせて、その答えに対して「どうやって実現させるか」を練りまわす工程が大切です。
ここに、自分のやりたいことが優先して介入する余地はありません。
僕が、かつて「美容師になりたい」と言って業界に入ったものの、価値提供ができずに貧乏でした。
理想的な価値提供のあり方を「どうやって実現させるか」にフォーカスし、自分の「何をしたいか」という自己実現欲求は一旦捨てる。
苦手な作業の外注化、事業拡大はそのあとの話
外注を駆使したり商流を上げる努力をしたり、フリーランスが収入を増やすための方法はたくさんあります。
しかし、これらは以下の問題をクリアし、そのうえで実践して初めて成果に繋がるノウハウです。
- 「価値提供」が商売の本質だと理解していない
- 「受け売り」が行動の根拠になっている
- 「どうやって実現させるか」を考えていない
精神の土壌が整っていないにもかかわらず、表面的な形だけを取り入れても空振ります。
価値提供について思案したり、自己実現欲求の優先度を下げたりといった行為は、あるタイプの人にとっては苦行かもしれません。
ただ、貧乏なフリーランスになりたくないと願うなら、避けては通れない道なのです。
まとめ
フリーランスを語るとき、多くは「場所・時間にとらわれず働ける」という一面的な部分ばかりが強調されます。さも、自分の人生を自由にしてくれるツールのように思えるのです。
しかし、実際は違います。
- 「誤」フリーランスは自分の人生を自由にする
- 「正」フリーランスは価値提供のあり方を自由にする
自由度の高い人生とは、自分のお金と時間を最大化させるために「価値提供の最適化」を図った人間にのみ手に入るのだと……僕はそう思います。
メリットだけでなく、フリーランスの現実も知ってほしい▼