2018年にフリーランスライターとして独立し、個人事業を軌道に乗せて2019年には法人を設立しました。その間、わたしは死に物狂いでした。
「営業を止めれば仕事がなくなる」
「でも営業ばかりやると実務が進まない」
「ならば、睡眠を削り働くほか道はない」
集客の仕組みが整うまで、営業と実務に追われて〝頑張るほどしんどくなる〟状態でした。
そんな状況にあるわたしへ、先輩フリーランスが「いったん売上を減らしてWEB集客に力を入れなさい」と言ったのです。とても恐ろしい提案に思えましたが、振り返るとあの助言に従ったことがターニングポイントでした。
この記事の執筆者

2018年からフリーランスライターとして主に法人メディアの記事制作に従事。
ランサーズ株式会社より「ランサーオブザイヤー2021」を受賞。大和出版『文章起業』など文章を題材にした著書複数。2022年からYouTube運営に注力。
フリーランスのWEB集客はシンプルだった
もともとWEB特化の文章屋として独立したのですが、正直なところ「自分で集客する」となると全くの素人でした。わたしの頭では何も思い浮かびません。
「できるだけ早く、睡眠を削るしかない現状を脱するため〝集客〟とやらを早く始めたい」
そう思い、個人事業の集客が得意そうな人のSNSやブログを探し漁って、若くて勢いのあるプロを見つけたのです。問い合わせをしたところ、このような主旨の返信がありました。
「すでに事業を営んでいる方なら集客は難しくありません」
「まさに今日、僕の事業を見つけたでしょ? 同じことをやれば良いだけです」
ああ、ほんとだ。とっくに彼の敷いたWEB集客の網に引っかかっていた……と、このときやっと気付く程度のレベルでした。
定番の集客手段、最初は上手くいかず
集客のプロである彼(便宜的にK青年と呼びます)は、わたしに「フリーランスの武器となる鉄板のWEB集客」として以下を紹介しました。
- SNS
- ブログ
正直、驚きはありません。SNSとブログが集客に役立つなんて、何度も耳にしました。
何より、すでに自分のSNSとブログくらいは持っています。それが1ミリも集客に役立っていないからこそ、わざわざ集客のプロを呼んだのです。

「たしかにブログもSNSもやっておられます」
「でも、藤原さんの発信には【読者の悩み】がこもってない。だから〝悩める人の漂流先〟になれていないのです」
理解の追いつかないわたしに、K青年は1つずつヒントを教えてくれました。
SNSは悩める人と直接関われるツール
フリーランスライターは文章を書いてなんぼの職種ですから、テキスト中心のSNSであるツイッターを勧められました。くわえて「今後あなたは誰の役に立ちたいの?」と聞かれ、わたしは2つの候補を挙げました。
- 良いライターが見つからず困っている事業者
- 活動が軌道に乗らず悩む同業者(ライター)
当初の目的である〝集客〟だけを見れば、前者だけでも良かったのですが、問いかけが「誰の役に立ちたいの?」だったため後者も含めました。
あくまでも、K青年はわたしのプランの甘さを正す役割。一挙一動を指示することはありませんでしたが、わたしが無い知恵を絞って1つの方針を打ち立てるまで付き合ってくれました。
「取引先に喜ばれる仕事のやり方を発信しよう」
これが、最後に自ら導き出した〝SNSを使って人の役に立つ方法〟でした。気ままに私生活を垂れ流していたSNS活用(?)とは違い、まともな方針を打ち立てた手応えがあります。
こんな発信内容へ変わり、ツイートが閲覧される回数(インプレッション)は徐々に増えました。
ライターの仕事は〝書いて納品したら終わり〟ではない。納品後、一定期間が過ぎてから「あの記事そろそろ情報を更新すべき時期ですね」と言い、リライトを提案すると喜ばれる。
— 藤原将|文章起業の著者 (@fujihara_sho) December 3, 2021
こんな提案をする人、知るかぎりでは少ないから更新業務があなたの独壇場になる。
「この情報ほんと?」
— 藤原将|文章起業の著者 (@fujihara_sho) August 7, 2021
「どうして? 理由は?」
「もっと新しい情報ない?」
これを自ら書いた文章にしつこく問える人は、企業にWebライターの仕事を任せてもらえる。
さらに「参照した情報源」と「選定理由」を原稿にメモして納品すると、信頼獲得までの期間が短縮される。
結果、なんと当初「こんな人の役に立ちたい」と設定したイメージの方々から、以下のようなメッセージをいただく機会が増えたのです。
――事業者
「こんなふうに仕事をしてくれるライターを探していた。ぜひ一緒に仕事をしたい」
――同業者(ライター)
「ずっと仕事のやり方に悩んでいましたが、先日のツイートを実践したところ喜ばれました」
SNSのダイレクトメッセージにはこのような連絡をいただけるようになり、それが起点となって記事制作の依頼を受けたり、講師やセミナー登壇の依頼が届いたり(言語疾患がありほぼお断りしていますが)するようにもなりました。
決して裏技的な集客ではありませんが、よく考えてSNSを発信に使えば、想いが誰かに届き結果として人を集められるのだと気付いた出来事です。このブログ記事すら、ツイートにしてしまいました。
Web知識ゼロだったフリーランスライターが、独立後に「周囲からお声がけいただける状況」をつくるため試した手段。いつも【悩める人の漂流先】になることを意識していました。
— 藤原将|文章起業の著者 (@fujihara_sho) February 13, 2022
1~3枚目は複数連携するほど効果が強くなり、4枚目は単体で機能する印象です。 pic.twitter.com/fU5I2NLUZN
ブログは広告を付けられるヤフー知恵袋
もともと運営していたブログは集客力ゼロでした。
とりあえず立ち上げて数十記事アップしたものの、まったく問い合わせがない状態です。読みやすい文章は書けるのですが、いかんせん当時は「どんなテーマの記事を書けば集客できるのか」がピンと来ていませんでした。そこでK青年から一言。
「ブログは丁寧なヤフー知恵袋を目指しましょう」

んん……?(当時のわたしの反応)
わたしなりに、もう少し分かりやすく翻訳してみました。
ブログは、あなたから見て「解決可能な悩み」を抱える人を読者に見立てましょう。そして読者の悩みをきれいさっぱり解消してください。直接指導したら高額な対価をいただけるくらい、最高の満足度を届けることが大切です。
ヤフー知恵袋は、誰かが投げかけた質問に対して、それに詳しい人が回答するプラットフォームです。その形を流用して、フリーランスが「詳しい人」のポジションになり、集客したい読者像を「疑問を持つ人」に設定して回答記事を制作するイメージです。
たとえば、こちらの記事は「自費出版をやった〝結果〟を知ってから自分も挑戦を検討したい」という方を想像して書きました。
読者さんが電子書籍に抱いているイメージと、わたしが実際に電子出版を経て感じた印象のすり合わせから始まり、具体的な費用感や出版効果について触れたものです。
また、この記事の読者さんが他に抱きそうな「Kindle出版の印税」や「Kindleデータの作成方法」といったテーマの記事も用意し、記事単体ではなくブログ全体でご満足いただけるよう工夫しました。そして、単なるヤフー知恵袋もどきで終わらないよう、記事内に「著者目線で原稿添削できます」や「出版代行も対応可能です」と盛り込み、自費出版に協力可能だとアピールすることも忘れません。
結果、公開後しばらくして個人出版を考えている方(主に個人事業主や経営者)からの問い合わせが増え始め、本記事の執筆時点ではこの記事経由のご相談が月に数件あります。
まさに〝自分の分身として営業してくれる存在〟になったことを感じる瞬間です。
定番以外の素晴らしいWEB集客
先ほど、ちらりと紹介した記事にある通り、わたしは過去に電子書籍を数冊出版しています。出版の経緯、原稿作成の手順は別記事に譲るとして、ここでは電子書籍が有するWEB集客手段としての能力をご紹介します。

そして、もう一つ紹介する「クラウドソーシング」に関しては、業種によって使える・使えないが別れる集客経路です。ただ、WEB系のフリーランスであれば検討の余地があると思ったこと、ならびに一定のリソースを投下すれば自動集客の経路になる投資対効果の高さを評価して、紹介を決めました。
電子書籍(Kindle)の出版
出版後の印象としては「書籍を見た→SNSやブログを見た→問い合わせ」の流れが生まれ、自分の仕事スタイルを理解して依頼してくださる方が増えました。Amazon内流入により、これまでSNSやブログではタッチできなかった層にも届くようになり、ご依頼内容の幅が広がった感覚もあります。
また、純粋に「あの本が役立ちました」という声をいただく機会ができたため、これまでに体験したことのない「消費者の皆さんの声が直接届く」という喜びも感じました。
Amazonに問い合わせたところ、印税額の公開はNGだそうなので曖昧にしていますが、ざっくりとした印象が伝われば幸いです。
秘密保持義務があるため遠回しな表現になりますが、1作目の出版以降、わたしの場合は平均して「毎月ドラム式洗濯機を買い替えられる」くらいの印税収入を得ています。別の表現にすると「月々の接待交際費、自社の社宅の家賃、税理士報酬」くらいの経費はまかなえる計算です。
引用:藤原将『個人事業主の売上を増やす「副業出版」の手引き書』ユートミー出版
事業収入として捉えるなら、決して多額とは言えません。また、対象となる読者数には限りがあるため、生涯持続する収入源とは考えていませんが、まとまった印税収入がある期間は積極的に事業投資ができますし、事業に割く時間を減らしてローギアで働くこともできます。
なお、電子書籍の出版は、SNSとブログの利活用に慣れたあとに取り組むことをおすすめします。
デジタルと言えども「書籍」なので、数万文字ほどのボリュームを目指したいところ。文章を書き慣れていないと完成させることすら難しいため、まずはSNSやブログを通じて少〜中ボリュームの文章作成を習慣化することをおすすめします。
派生形として、ペーパーバック(安価な紙をもちいた本)出版も選択肢に挙がります。
クラウドソーシングの自動集客化
利用していない方でも、何となく存在はご存知かもしれません。簡単に言うと、クラウドソーシングは「フリーランス」と「フリーランスに外注したい人」をつなげるプラットフォームです。
掲載されている仕事が低単価だとか、手数料が高いだとか言われる始末ですが、わたしの場合はブログと並ぶ(時期によってはブログを凌いでいた)太い集客経路です。
クラウドソーシング上での受注実績が少ないうちは、能動的に営業をかける必要があるものの、ある程度の実績数が溜まればスカウト(発注側からオファーが来ること)が増えます。

2021年、自ら営業をかけた場面は一度のみですが、受注数は30件を超えています。リソース不足のために対応できなかった案件もあり、それを含めると月に平均5〜10件は〝何もしなくても〟ご相談が来る状況です。
- 能動的に営業して実績数をためる
- クラウドソーシング内の需要傾向を探る
- 需要に合わせてプロフィールを整えていく
※ 発注側が外注候補のフリーランス候補を検索したときヒットすることを狙う - プロフィールがハマり自動集客の経路になる
手順を見て面倒に思うかもしれませんが、集客経路は資本を投じる(広告出稿、媒体運用の代行)か、労力を投じなければ育ちません。
現状、あまりポジティブなイメージがなく、新米フリーランスのなかでも「仕事になれたらクラウドソーシングは卒業しよう」と言われているくらいなので、まだまだ育て上げたときの集客効果は続くと踏んでいます。
個人事業の「ブランディング」の話
WEB集客の基本は「悩める人を助けて自分を知ってもらう」なのですが、少し発展的な観点として「どういう人物像として認識されたいか」も大切になってきます。
わたしの場合、穏やか・丁寧・几帳面などの印象があると良いな……と思いつつ発信しているのですが、人にはそれぞれに合ったキャラがあるものです。
ノウハウは先人のやり方を真似すれば良いのですが、キャラまで誰かの真似をすると、それを演じ続けることが苦痛になります。できるだけ、自然体の自分のまま発信するほうが圧倒的に楽なのです。
「とはいえ、自分はいたって普通のキャラだし、映える実績もまだない。どうやって一からブランディングを練っていけば良いのだろう」
と悩んだときに役立つコンテンツをご紹介します。
一流セールスマンのブランディング論

今回ご紹介したいコンテンツは、本業では住宅販売のトップ営業マン、副業ではセールスライターを務めるアベヒロミチさんの『SALES BRANDING BLOG』にある記事です。
アベさんのブログにある「セルフブランディング」の記事群は、どれも大変参考になる内容ですが、1記事目は『セルフブランディング戦略とは、あなた”ならでは”の強みを訴求すること』をおすすめします。とにかく、ブランディングの全体像を掴みやすいコンテンツだと感じたからです。
- まさに、その通りですよね
- そんな視点もあるんですね
- えぇ……目からウロコです
こんなリアクションの連続でした。わたしも一応、発信している身ですから内容には大変共感しましたし、それ以上に「自分では気付けなかった視点」もこの記事からたくさん教わりました。
実際にアベさんのツイッターは、メイン・サブを合わせて7万名超のフォロワー(執筆時点)から支持されていますし、ブログも月間数万PVあるそうですから説得力は十二分にあります。何より文章が読みやすいため、ぜひブランディング論の参考資料にしていただければと思い紹介しました。
個人的に意識してきたブランド作りの基礎
ブランディングと聞いて「なんだか胡散臭い」と感じる人は一定数いると思います。
わたしも、そう思っていた側の一人です。実際、怪しげなテクニックを活用して他者の心に付け入り、いわゆる〝教祖と信者の関係〟を作ることをブランディングと呼ぶ、教祖志望者たちを見たこともあります。
そういうブランディングを目指す人を止めることはありませんが、わたしは(一個人のブランディングに関しては)もっとナチュラルな状態で良いと思っています。単に……
- ある「共感」の中心地になる
- ある「理論」の教育者になる
- ある「挑戦」の実行者になる
これを〝ありのままの自分〟が実践して対外的に発信したのなら、もうそれはブランディングなのではないかと思うのです。
むしろ、心の底では「もしかしたら痛いキャラかも」とか「本当の自分はこんな性悪じゃないけど」と思いながら、そのキャラを何年も演じるほうが、ブランディングの本質から逸れている気がします。
そうやって作ったブランドが、5年, 10年と持続できるようには思えないからです。数年経てば維持が辛くなるブランディングに、人生のうち決して少なくない時間を費やしても後悔しないのでしょうか。拙いながら、わたしはいつも、そこから考えています。
わたしが実践したブログ集客方法
ここまでいろいろと解説してきましたが、なんだかんだ最終的に集客の要になる発信媒体はブログです。しかし、どうにも「ブログ=広告リンクを貼って稼ぐもの」という認識が強いのか、あまりブログ集客を軌道に乗せているフリーランスを見かけません。
集客経路が整っていないフリーランスは、まだ広告収益を狙わなくても良いのでは?
という問題提起に始まり、個人事業に顧客を集めるためブログをどう設計すれば良いのか、3タイプに分類して記事にまとめました。Webライターを例にしていますが、基本的な考え方はどの職種にも通用すると考えています。

「ブログ集客をどう考えるか」がピンと来ないなら、ぜひご一読ください。