
販売後の売上はどのくらい?
紙 vs 電子書籍(個人出版)の印税
Kindle Unlimitedは儲からないのか
2020年10月、初めてAmazonに電子書籍を出版しました。
2021年3月には、紙書籍(単行本)を出版しています。
紙書籍・電子書籍を出版した身であるため、印税に対して中立的な意見を述べられると思います。
「電子書籍を出版しようか検討しているが、労力に対する効果が不透明だから……」と悩んでいる方の参考になれば幸いです。
印税率|紙書籍は10%未満、電子書籍35~70%
さっそく本題から入ります。
紙書籍の印税率は10%未満です。紙書籍に関しては「印税率○%でした」と公開できませんが、ビジネス書の場合は印税率5~8%の範囲に収まると聞きました。
著者が有名である場合は10%程度になるそうです。
一方、Amazonに出版した電子書籍(Kindle)は、以下条件を満たすと印税率が70%となります。
- Kindleストアに独占販売
- 商品価格は250~1,250円(税込)に収める
現状、Amazonが電子書籍の市場を牛耳っていますから、Kindleストアに独占販売する設定にしました。商品価格は何度か変更しましたが、いずれも250~1,250円に収まる範囲としています。
本記事の執筆時点では商品価格を1,200円に設定しており、販売数1冊あたりの印税収入は763円(税抜価格に対する70%であるため)です。参考までに、以下に自著のリンクを掲載します。
紙書籍の印税率を8%とした場合、1,200円の税抜価格に対する印税額は87.28円となります。
項目 | 紙書籍 | 電子書籍 |
---|---|---|
税抜価格 | 1,091円 | 1,091円 |
印税率 | 8% | 70% |
印税額 / 冊 | 87.28円 | 763円 |
1冊あたりの印税額には、675円程度の差があります。
仮に電子書籍の印税率を35%としても、1冊あたりの印税額は381円になりますから、利益率の面では電子書籍に軍配が挙がるでしょう。
ただし、商業出版の際に「出版社から紙書籍と電子書籍を出版する」という形の場合、著者の印税率は紙書籍と同等、あるいは紙書籍より少々高めの数字が適用されるそう。
「電子出版は収益性が高い」というより、「電子書籍のセルフ出版なら収益性が高い」と言えます。
Amazonのシステムを利用したセルフ出版の手順に関しては、以下の記事で解説しています。
電子書籍の出版に関心のある方は、ご一読ください。
電子書籍の印税(月間売上)のイメージ
Amazonのサポートセンターに「印税推移を公開しても良いでしょうか」と尋ねたのですが、機密保持義務の関係から公開は控えなければならないようですから、誰でも入手できる情報を使ってざっくり印税のイメージをお伝えします。
もちろん「自著がどのくらいの売上なのか」を知っているため、正確な情報を届けられず歯がゆいものの規則は規則。やや雑な計算式ですが「このくらいの印税をできる可能性がある」という、可能性の指針にしていただけますと幸いです。
1冊買われた場合の印税 ※買い切りによる購読 | 763円 |
1冊読まれた場合の印税 ※Kindle Unlimitedによる購読 | 約150円 ※KENP単価 0.5円、1冊250ページと想定 |
Twitterフォロー増加数 | 100人 / 月 |
ブログ新規ユーザー数 | 4,000人 / 月 |
毎月4,100人、新しく自著を読んでくれる可能性のある方と繋がることができています。
Twitter、ブログともに「Webライターの活動を軌道に乗せる方法」をメインに発信していますから、自著との相性は非常に高いはずです。新しく繋がった方の5%が自著に関心を抱き、電子書籍を手にしてくださると仮定してみましょう。
20人に1人。つまり、4,100人のうち205人が購入、あるいはKindle Unlimitedによる無料購読を通じて電子書籍を手に取ってくださる計算です。
購入と無料購読の割合も機密保持対象かと思いますから、ここはざっくり50:50と仮定します。
- 電子書籍の購入者:102人 / 月
- 電子書籍の購読者:102人 / 月
※整数以下は切り捨て
売上換算するなら前者は「102人×763円=約7.8万円」、後者は「102人×150円=約1.5万円」となり、月間の印税収入は約9.3万円です。
Amazonのプラットフォーム内から発見・購入してくださる方もいらっしゃるでしょうから、ざっくり50%ほど上乗せして……約14万円としましょう。
※Kindleユーザー数は新しいデータがなく、推測の材料が見つからないため大雑把な計算になりすみません。
Twitter、ブログ閲覧者は「この人の発信いいな」と思い購入してくださる可能性が高いものの、Amazonでは推薦機能によりポッと自著があらわれることになりますから、ユーザーが圧倒的に多いとはいえ購買数が2, 3倍になる可能性は低いのでは……と考えています。
繋がった方の趣味嗜好は数値化できるほど簡単ではありませんし、簡単な仮計算ですが、出版した電子書籍の内容に関心のある人々を集めることで、月間の印税を10万円以上にすることは現実的に思えます。
今回の仮計算はともかく、少なくとも私は「あと何冊か出版してみよう」と思える水準でした。
ボヤっとした部分もありますが、少しでも参考になれば幸いです。
「Kindle Unlimitedは儲からない」への疑問
Kindle Unlimitedは、月額課金制のKindle読み放題サービスです。
ユーザーは月額980円のサービス利用料を払うと、Kindle Unlimitedの対象となる電子書籍を何冊でも読めます。
ただ、Kindle著者からすると、サービスの捉え方はやや異なるはずです。
Kindle Unlimited=読者に購入以外の購読方法を与えるシステム
このように捉えてしまうかもしれません。
実際、私が出版した電子書籍の場合、購入されると1冊あたり763円の報酬を得られますが、Kindle Unlimitedを使って読まれた場合には1ページあたり0.5円(全ページ読まれても150円 / 冊)となります。
だからこそ、一部では「Kindle Unlimitedは儲からないだろう。無料購読の対象にならないよう設定しよう」といった声もあるようです。
しかし、個人的には「Kindle Unlimitedの対象書籍に設定するほうが良い」という意見を持っています。
- 読者は個人出版された電子書籍に不信感を持っている
- 正規価格とのギャップが「とりあえず読んでみよう」の導線になる
- Kindle Unlimitedだから期待できる販売促進効果もある
上記のような理由があるからです。
読者は個人出版された電子書籍に不信感を持っている
まず(読者側は嬉しくないニュースですが)個人出版された電子書籍は、商業出版された紙書籍に比べて低品質なものがあります。
編集者が介在しないため文章は分かりづらく、正しい情報と誤った情報が混在する出版物もあるのです。
そのため、質の低いKindleを手に取った経験のある読者は「個人出版のKindleは高価格なら手を出さないでおこう」という心理が働くと思われます。
Kindle Unlimitedによる書籍の無料化は、その抵抗感を払拭して「無料だし読んでみるか」と思わせる要素です。
正規価格とのギャップが「とりあえず読んでみよう」の導線になる
自著の場合、正規価格は1冊あたり税込1,200円です。個人出版の電子書籍には99〜500円程度の作品が多いなか、通常の書籍に近い価格帯となっています。
当然、正規価格が高くなるほど検討中の見込み読者は購入しづらくなるのですが、同時にKindle Unlimitedの登録者にとっては「正規価格がこれだけ高いなら内容に期待ができそうだ」と思わせる要素になるのです。
これまで、自著は段階的に正規価格を変えてきました。
- 250円(出版記念セール)
- 500円
- 980円
- 1,200円(紙書籍化にともない契約による値上げ)
すると、正規価格の上昇に比例して購入数 / 月は減り、Kindle Unlimitedによる購読ページ数が増えました。
段階的にKindle Unlimitedの購読ページ数が増加する様子を見るに、やはり「正規価格が高いほど無料購読の対象として期待値が上がる」という相関性があるのではないかと思います。
Kindle Unlimitedだから期待できる販売促進効果もある
Kindle Unlimitedの対象にすると、いくらか販促効果を期待できます。
- Kindle Unlimitedの対象になると表紙画像が変わる
- 読者が「こんな本を無料で読めます」と宣伝してくれる

これにより、Kindle Unlimitedのユーザーは一目で「この本は無料で読めるぞ」と気付きます。
Kindleの出版方法を説明した記事でも触れていますが、本の詳細ページへ引き入れるためには〝表紙・タイトル・レビュー(評価)〟といった要素が重要になりますから、表紙画像の上部に追加されるロゴは詳細ページに飛んでもらうための動機になり得るのです。
また、Kindle Unlimitedの対象書籍に設定しておくと、SNSやブログで「無料なのに素晴らしい本がありました」と宣伝してもらえます。
安いのに高品質だと思ってもらえれば、安かろう悪かろうの認識が覆されて感動を与えられるからです。口コミのパワーは侮れませんから、感動した旨の発信が増えることに期待してKindle Unlimitedを使う、という判断も良いように思います。